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大正時代、箱根に旧三井家の別荘として『翠松園』が建てられた。
それから80余年の時が経ち、箱根の森林に囲まれたおよそ3,000坪の広大な土地に、新たに宿として『箱根・翠松園』が誕生した。至るところに自然のぬくもりが窺える、ゆったりとした室内空間。時代を遡ったかのような日本家屋の和食レストラン。
真田雅郁のデザインする設計には、たしなみすべてが包み込まれている。
それから80余年の時が経ち、箱根の森林に囲まれたおよそ3,000坪の広大な土地に、新たに宿として『箱根・翠松園』が誕生した。至るところに自然のぬくもりが窺える、ゆったりとした室内空間。時代を遡ったかのような日本家屋の和食レストラン。
真田雅郁のデザインする設計には、たしなみすべてが包み込まれている。


私の事務所であるM-styleの設計の特徴は、あまり建物やインテリアを装飾的にしないというところです。空間を飾らず、雰囲気、空気を作ることを心がけています。こだわりは、できるだけ自然素材を選ばせてもらっているところ。今回手がけた『箱根・翠松園』でいうと木や石ですね。ナチュラルから濃い色までと幅広く色味や木目、仕上げ方法の違いなどで、素材を選んでいますが、基本的には身近にある素材で見せました。自然の中に隠れてしまうような、目立たずひっそりするというコンセプトです。

部屋数を少なくし、それぞれに個性を持たせて、部屋の設えを全部変えています。訪れるたびに新たな発見があるような、そういった設計をさせていただきました。
メゾネットがあり、ツインがあり、床と壁の素材を変えたりと、同じ設計者がデザインしていても部屋ごとに違う雰囲気を出せたら面白いかなと、施設の運営会社のKPGラグジュアリーホテルズと話し合いながら進めました。プライベート感を重視し、様々なお客様のニーズに応えるための工夫を作りました。例えばバトラーと目を合わさずにルームサービスを受けることができる扉があったり、チェックイン・チェックアウトが部屋で済ませられるようにとか。そのようないろいろな“仕かけ”があるんですよ。
メゾネットがあり、ツインがあり、床と壁の素材を変えたりと、同じ設計者がデザインしていても部屋ごとに違う雰囲気を出せたら面白いかなと、施設の運営会社のKPGラグジュアリーホテルズと話し合いながら進めました。プライベート感を重視し、様々なお客様のニーズに応えるための工夫を作りました。例えばバトラーと目を合わさずにルームサービスを受けることができる扉があったり、チェックイン・チェックアウトが部屋で済ませられるようにとか。そのようないろいろな“仕かけ”があるんですよ。

もともと私のやり方が“飾る”感じではなかったので、現場を見たときから、「どう自然の中にとけ込ませるか」を考えました。普段から自然素材を使ってデザインしていくので、その点で運営会社との意識がうまく合致したんだと思います。和紙を張りたいとか、無垢材のフローリングを使いたいとかね。
でもまず『箱根・翠松園』は由緒ある三井家の別荘だったので、その良さをどう活かしていくかがカギになりました。今回は庭を安諸定男先生(※)に作っていただいたのですが、完成後に彼が「借景」という言葉をおっしゃっていましたね。周りの山、杉林の風景を借りて自分の庭を作る。なるほどなと思いましたが、図らずも私も同じようなことを考えていたようです。
また、デザインされた雰囲気、空気のなかに強い印象を残すために用いるのが、いろいろな意味での“裏切り”です。自然素材のなかに工業的なシャープなものを入れて、見た目のギャップを出すこと。「旅館だからこうだろう」という先入観に、感覚的だったり物理的だったりと、ちょっと違うものを差し込むことで、いい意味で予定調和でない部分を入れていきたかった。ディテールの積み重ねで醸し出される雰囲気を強調するべく、デザインをそぎ落とす。そんな“消して”いく部分に苦労しましたね。そもそも自然の中の建物、という設定自体がギャップですが(笑)。
箱根は建築基準が結構厳しいんですよ。なかなか都会にホテルを建てるようにはいかなかったんです。また、旧三井家の翠松園は古い建物で、その時点では居住空間として利用されておらず、すぐに使用できる状態ではなかった。補強を施したのち、元来備わっている建物自体の上質さに、いかにして息を吹き込み際立たせるかが、デザイナーとして求められましたね。
デザイン自体はすんなりといったのですが、やはりプライベート感の演出が大切だった。誰ともすれ違いたくないし、目を合わせたくないけれども、ホテルに泊まっていることは見せたいというか。ところがホテルとか旅館って、わりと公的な側面が大きいじゃないですか。その辺の葛藤をどう解消していくかが課題でしたね。だからロビーは『箱根・翠松園』の顔ではあるけれども、寛ぐ場所ではないんですよ。とりわけ、本館のエントランスから入ってくるエリアの土壁から、フットライトの光、足元に施した窓。その動線へのアプローチの仕方は、一番初めのプレゼンから貫き通したところなんです。目が合わないように格子を立てたり、窓を足元だけにしたり、コンシェルジュが座っていても見えないようになっているとか。それらを踏まえてレストラン「紅葉」で食事をしていただければ、苦労したのが分かってもらえるかなと(笑)。
※庭師。フランス、エックバレン栄誉市民。
でもまず『箱根・翠松園』は由緒ある三井家の別荘だったので、その良さをどう活かしていくかがカギになりました。今回は庭を安諸定男先生(※)に作っていただいたのですが、完成後に彼が「借景」という言葉をおっしゃっていましたね。周りの山、杉林の風景を借りて自分の庭を作る。なるほどなと思いましたが、図らずも私も同じようなことを考えていたようです。
また、デザインされた雰囲気、空気のなかに強い印象を残すために用いるのが、いろいろな意味での“裏切り”です。自然素材のなかに工業的なシャープなものを入れて、見た目のギャップを出すこと。「旅館だからこうだろう」という先入観に、感覚的だったり物理的だったりと、ちょっと違うものを差し込むことで、いい意味で予定調和でない部分を入れていきたかった。ディテールの積み重ねで醸し出される雰囲気を強調するべく、デザインをそぎ落とす。そんな“消して”いく部分に苦労しましたね。そもそも自然の中の建物、という設定自体がギャップですが(笑)。
箱根は建築基準が結構厳しいんですよ。なかなか都会にホテルを建てるようにはいかなかったんです。また、旧三井家の翠松園は古い建物で、その時点では居住空間として利用されておらず、すぐに使用できる状態ではなかった。補強を施したのち、元来備わっている建物自体の上質さに、いかにして息を吹き込み際立たせるかが、デザイナーとして求められましたね。
デザイン自体はすんなりといったのですが、やはりプライベート感の演出が大切だった。誰ともすれ違いたくないし、目を合わせたくないけれども、ホテルに泊まっていることは見せたいというか。ところがホテルとか旅館って、わりと公的な側面が大きいじゃないですか。その辺の葛藤をどう解消していくかが課題でしたね。だからロビーは『箱根・翠松園』の顔ではあるけれども、寛ぐ場所ではないんですよ。とりわけ、本館のエントランスから入ってくるエリアの土壁から、フットライトの光、足元に施した窓。その動線へのアプローチの仕方は、一番初めのプレゼンから貫き通したところなんです。目が合わないように格子を立てたり、窓を足元だけにしたり、コンシェルジュが座っていても見えないようになっているとか。それらを踏まえてレストラン「紅葉」で食事をしていただければ、苦労したのが分かってもらえるかなと(笑)。
※庭師。フランス、エックバレン栄誉市民。

創り終わってお客様に利用していただく段階で、建築は私の物ではなくなります。クリエイターとしては、創ったらおしまい。ここから先はお客様とスタッフとが育てていく施設だと思っています。スタッフの魅力もこれからどんどん出てくるんですよ。『箱根・翠松園』は部屋数が限られている上に、旅館が離れですから、お客様とスタッフとの関係も親身な付き合いになっていきます。初めて泊まったお客様も部屋で寛ぐことができ、繰り返し利用されるお客様には前回泊まった時の要望が次の時既にセットされていたり…。お客様に“私の宿”という気持ちになってもらえると思います。
『箱根・翠松園』は、これからもっと宿として成長し続けると思います。何といっても建築物は生き物ですから。

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真田雅郁 Masafumi Sanada
1971年、埼玉県生まれ。
1995年、東京電機大学工学部建築学科卒業。
2000年〜2005年まで株式会社スーパーポテトに勤務ののち、フリーランスの設計デザイナーとして有限会社M-styleを設立。
1995年、東京電機大学工学部建築学科卒業。
2000年〜2005年まで株式会社スーパーポテトに勤務ののち、フリーランスの設計デザイナーとして有限会社M-styleを設立。
公式HP : http://www.mstyle-inc.jp/


